ああウイスキー! 遊びと悪戯の命!
詩人の心からの感謝を受けてくれ!  (中村為治訳 「R.バーンズ詩集」岩波文庫)

クラガンモア(CRAGGANMORE

クラガンモア蒸留所は、1869年にバリンダルロッホに設立されて以来、現在に至るまで当時と同じ設備、同じ製法によって製造を続けている。

「スペイサイドで最も良質のモルトの1つである」
と、評論家マイケル・ジャクソンの採点でも、12年物が90点と、スペイサイドではマッカランに次ぐ高得点。軽快な香り、大麦由来のうまみと樽香のバランスがよく、飲み口がやわらかなスペイサイド・モルトを代表するウイスキーである。それはまた、自信の表れか、化粧箱の裏書によると、
「あらゆるモルトの中で最も複雑な香りを持った、優雅で洗練されたスペイサイド(モルト)。わずかに甘い特徴を持ったおどろくほど心地よい香り。そして、フィニッシュには燻煙香」
とあって、洗練さと、きわめて華やかで、スイートな香りと、豊かでコクのある味わいを兼ねそなえている。


クラガンモアの誕生については、この蒸留所が持つ、独特なスピリッツスチルの形状を抜きにしては、語ることはできない。

それは、創設者であるジョン・スミスが、ウイスキーづくりの理想を追求したオリジナル・デザインであって、再留釜が一般的なスワン・ネック型ではなく、上部の平らな、いわゆるT字型シェイブのポットスチルを採用したことで生まれた。

さらには、冷却にはコンデンサーではなく、冷却ウァームと呼ばれる異常に長いらせん管が煙突のようにT字にネック部分と結合している。それはすなわち、時間をかけてゆっくり冷却するためにあるのだ。

それによって、フラットな天井と、T字のラインアームは蒸留のさいの還流(リフラックス)をうながし、硫黄臭のような不快な香気成分を、ふたたび釜にもどすはたらきをする。軽めでデリケートな蒸気だけが、クラガンモアになる。

蒸留所内の展示室には、「スペイサイドきっての蒸留者」といわれたジョン・スミスが実際につかっていたデスク、それに<オールド・パー>のメイン・モルトとしてもつかわれているのにちなんでか、トーマス・パーの肖像画などが展示されている。

そんな偉大なウイスキー職人のひとりだったスミスは、クラガンモア創設以前までには、マッカラン、ザ・グレンリベット、クライスデールなどのそうそうたる蒸留所のマネージャーを歴任していた。1865年から69年まで、グレンファークラスの借り受け営業者でもあった。

一説によると、その創業者ジョン・スミスは、ザ・グレンリヴェットの創業者ジョージ・スミスの私生児だったともいわれている。

その後、1923年、ホワイトホース社と、バリンダルロッホの領主でもあったマクファーソン・グラントが共同で買収したものの、DCL社が、そのホワイトホース社を買収。そして、1965年、DCL社がグラント家から残りの株式を買い取った。

1988年には、40もの多くの蒸留所を所有するUD社は「シックス・クラシック・モルト」として、各地区から6ヶ所の蒸留所を選んでおり、スペイサイドの代表銘柄としてモートラックと争い、そして選ばれたのが、このクラガンモアだった。華やかでエレガントな、いかにもそれにふさわしいスタイルのモルトである。

このクラガンモアの知名度はあまりないかもしれないが、ツウ好みのモルトウイスキーでもある。輸入元は、あのディアジオ・モエ・ヘネシーである。水割りがうまいと聞きしったので、個人的には、やはり水割りのイメージが強い。

スペイ川中流、エイボン川があるスペイ川に注ぐ合流点の近く、バリンダルロッホ。近くにクラガンモア丘陵を望むところから、蒸留所の名がついた。そのバリンダルロッホこそ、スミスが選択した理想の蒸留所の地であったのだ。

ちなみに、Cragはゲール語で「突き出た岩」、moreは「大きい」をあらわし、「突き出た大岩のある丘」の意味である。

その蒸留所建設の決め手となったのは、良質の水であった。むかしから密造者のあいだでは、有名な名水中の名水であったのだ。泉の水は、ウィスキーづくりに適するといわれる軟水ではなく、硬水であった。それにもう一つは、輸送の便。当時、スペイ川沿いに開通したたストラススペイ鉄道の存在があった。

大の鉄道マニアでもあったかれは、バリンダルロッホ駅から引き込み線を敷き、ロゴ・マーク入りの専用貨車で樽を輸送したという。

とはいっても、140キロを越す巨漢でもあったかれは、汽車の乗車口に乗り込めず、やむをえず貨車に乗って、旅行をせざるを得なかったらしい。それもあってか、ボトルのラベルには機関車の絵が描かれているのは、ちとほほえましい。

そんなクラガンモアのモルト原酒は、ブレンダーからの人気が高く、操業開始から1905年夏の改築まで、年間休業日数は2週間を超えることはなかったという。

さて、ウォッシュバックは、オレゴン松製で6基。ポットスチルは、1964年に2基から4基に増設され、初溜釜が2基、再溜釜が2基の合計4基となった。使用する大麦品種は、ディアジオ社から供給されるデキャンター種。オプティック種から切り替えた。

樽はといえば、シングルモルト用には、アメリカン・オークのリフィルのホッグスヘッド樽のみ。ブレンデッド用には、その限りではなく、シェリー樽や、バーボン・バレルをもつかっているという。年間生産量は150万リットルと、やや小規模である。

クラガンモア12年は、ミディアムタイプの定番モルト。シリアル系、フレッシュフルーツ、花のような、スモーキーな香りと、豊かで、コクがあり、そのくせ柔らかな口当たり。ハチミツのような華やかさと、しっかりとしたまろやかなボディ。飲みやすく、どんな場面で飲んでも良さそうだ。

クラガンモア 1993 15年 シャトー・オー・ブリオン フィニッシュ;
ボトラーズのマーレィマクダヴィット社から出されたもの。また、ギガルのコートロティの空き樽で、フィニッシュさせたものある。

※参考図書;「スコッチウイスキー紀行」(著者:土屋 守、刊行:東京書籍)



♪ レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ /『南極交響曲』(交響曲第7番)♪

RVWが映画「南極のスコット」につかわれた音楽を再構成し、交響曲仕立てにしたもの。
プレヴィン/ロンドン交響楽団の演奏をwalkmanで聴く。

命を懸けて、南極点一番乗りを競ったノルウェーの探検家アムンゼンと、イギリスのスコット大佐と探検隊。が、スコット隊は犬ぞりを使ったアムンゼン隊に敗北し、あげくはその帰路、遭難してしまった悲劇を描いたものである。

全5楽章。悲劇を暗示するオーケストラの演奏と、女声合唱による声楽が、前人未到の南極大陸の幻想的な雰囲気をかもし出す第1楽章。その動機がもどってきて、フィナーレではいよいよ、悲劇が訪れる。

ソプラノとコーラスと、ウィンドマシーンにより、嘆きの歌がヴォカリーズで歌われる。まさに雪女の嘆き声のように響くソプラノのヴォカリーズ、圧倒的なオルガン。うねるような弦。

映画音楽だっただけに、わかりやすく、聴きやすい。美しい旋律がちらほら登場して、全体として涼やかに音楽は流れていく。しかし、悲劇を描いた作品だけに、ちょいとものたりなさも残る。

RVWの交響曲のなかでは、第1番「海」、第2番「ロンドン交響曲」、第5番、第7番「南極交響曲」の4曲がよく聴かれる作品。

■■飲酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。お酒は楽しくほどほどに。