グレンファークラス、スペイサイドの逸品!

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ああウイスキー! 遊びと悪戯の命!
詩人の心からの感謝を受けてくれ!  (中村為治訳 「R・バーンズ詩集」岩波文庫)

グレンファークラス、スペイサイドの逸品!

「この地域を代表する同種のウィスキーに集まる幅広い人気こそ得てないが、スペイサイドモルトの中で最高級のモルトである」
と、マイケル・ジャクソンは、「モルトウィスキー・コンパニオン」のなかで、こう書いている。かなり早くから名声を獲得し、ブレンダーからは、つねにスペイサイドの「トップ3」に数えられるモルトであった。

老舗蒸留所のひとつでもあるグレンファークラス蒸留所は、スペイ川の支流、エイヴォン川に沿ったこの地に、1836年、レヒレリヒ農場の小作農ロバート・ヘイが、クレイゲラヒに近いダンダリース蒸溜所の設備をつかって蒸溜所を建設した。

グレンファークラス(Glenfarclas)とはゲール語で、「緑の草の生い茂る谷間」を意味し、その名の通り、広々とした草原がつづき、眼下にスペイ川の谷をのぞむことができる。

1865年に創業者が亡くなったため、J・G・グラントが借地権を買い取り、経営にのりだした。本格的にウイスキーづくりをはじめたのは、かれが経営にのり出してからである。今でもグラント一族がファミリー経営を続けている。ちなみに、現社長は、一族の6代目にあたる。

オフィシャル・ボトルとして出されるシングルモルトは、スペイサイドのしっかりとした個性、全体的にどっしりと重みのある特徴が、高評価を得ている。同じ地区のマッカランと比較すると、やや男性的な印象がある。マッカランがドライ・オロロソ・シェリーにこだわるのに対して、グレンファークラスはアメリカン・ホワイトオークなどの各種のシェリー樽をつかう。

しかしながら、ファーストフィル~サードフィルのシェリー樽をつかいわけ、スペイサイドや、ハイランドらしい味わいだが、麦芽の風味豊かで、シェリー樽の印象もつよく、ほかのそれと比べても、より複雑でしっかりしていて、よりヘビーな感じがする。それと、主流となっているウッドフィニッシュを一切やっていない。全体的にいえば、食後酒向きといえる。

仕込水は蒸留所背後のベンリネス山の泉から引いており、雪解け水がヘザーと、花崗岩の大地を流れ下ったものであり、極めて良質な軟水であるといわれている。ピート香によるスモーキー・フレーバーをそなえており、そのうえシェリー樽熟成で、より濃厚な香味と、トロリとした舌触りをかもしだすのだ。

ポットスチルはというと、20年ごとに新しくつくりかえるのだが、ポットスチルの容量を大きくするときも、何ごとにも伝統を重んじる家系なので、創業当時の蒸留釜そっくりにつくらせているほどのこだわりよう。それも、ボール型で、合計6基なのだが、マッカランがスペイサイド最小にこだわるも、
「小さいことは必ずしも良くない」
と、1基あたりの容量は初留25,000、再留21,000リットルと、でかい。それのそのはず、マッカランのそれよりも、およそ7倍と地区最大級。さらに、加熱方法は北海油田の天然ガスを利用し、伝統的な直火炊きにこだわって、モルトづくりがおこなわれている。

それはというのも、近代的な方法も取り入れてみようと試してみたが、出来上がったウイスキーの味が良くなかったため、直火焚き蒸留を今でも続けているという。



もともとスコットランドではたいへん人気があったが、現在では欧米、さらにオーストラリア、アジアでも人気を不動のものとしている。数多いシングルモルトの銘酒のなかでも、伝統へのこだわりを追求した、スペイサイド入魂の酒である。そこが、マッカランの好ライヴァルと目されるところだ。

また、グレンファークラスは、製造したウイスキーにすべてに、「グレンファークラス」の名をつける。それはすなわち、すべてをシングルモルトとして出荷しており、ブレンド用の樽売りは一切おこなっていないというアカシ。

ビジターセンターを設けたのも、1973年と早く、それは90年代に改築されて、レセプション・ホールとなった。そのさいには、内装に豪華客船、「オーストラリアの皇后」の仕官室の廃材を利用したともいう。また、農業出身者らしく、ウイスキーづくりのかたわら、麦芽のしぼりカスを飼料にして、アバディーン・アンガス牛をも飼育している。

10年物から12年、15年、17年、21年、25年、30年 40年、さらに105と数多くのボトルを出しているのも人気の理由のひとつ。105とはアルコール度数が105プルーフ、つまり60度であることを意味している。

「グレンファークラス105」だが、ウェアハウスから優れた樽を選びぬいてヴァッティングしたもの。カスクストレングスとしては、かつてないスムースさをもつウイスキーとして、世界中のファンから支持されている。1968年、現社長の父ジョージ・S・グラント氏は家族や友人へのクリスマス・プレゼントとしたものであったようだ。

かつてのイギリスの首相、モルト通であり、酒豪でしられるサッチャー女史は、いつも飲んでいる酒は、と聞かれて、
「グレンファークラス105」
と答えたことがあるという。そのほかにも、このグレンファークラスには、閣僚たちの個人専用樽が置かれているともいう。

この「グレンファークラス105」の誕生40周年を記念して、度数、熟成年数、スタイルのすべて満たした2樽が選ばれ、もちろんアルコール度数60%で、ボトリング。総本数893本。そのうち、60本が日本入荷。まさに特別と呼ぶにふさわしいボトルである。

2007年より、「グレンファークラス・ファミリーカスク」を販売。グラント家が所有する樽から、1952年~94年の全ヴィンテージをリリースした。



※参考図書;「スコッチウイスキー紀行」(著者:土屋 守、刊行:東京書籍)。

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