グレンキンチー

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グレンキンチー(Glenkinchie)

ローランドの代表格

ライトボディでデリケート、かつエレガント。ローランド伝統のモルト。オフィシャルボトルのラベルには、「ザ・エジンバラ・モルト」と表示されている。MHD(モエ・ヘネシー・ディアジオ)傘下。

1989年、ディアジオ社の前身であるユナイテッド・ディスティラーズが「クラシック・モルツ・オブ・スコットランド(スコットランドを代表する6つの生産地から、同社が所有する6つの蒸留所をフィーチャーして、それぞれの地域を代表するボトル)のセットに加えて宣伝するまで、グレンキンチーの名はほとんど忘れ去られていた。

蒸溜所は首都・エディンバラから東に約24km、イースト・ロージアンの小さな村・ペンケイトランドよりさらに分け入った奥深き農地にある。

グレンキンチーとは、蒸溜所の横を流れるキンチー川から名づけられたようだ。が、しかし、「キンチー」の語源は、よくわかっていない。かつての領主、フランスのノルマンディー地方からやってきた貴族の名であった「ド・クインシー」が、変化したものであるともいわれている。

かつてはキンチー川から直接水を引いていたが、農業汚染が懸念され、現在は近くのラマーミュア丘陵の湧水を井戸から汲み上げている。硬水なのだが、酵母のアルコール発酵に影響を与えると考えられており、グレンキンチーの軽やかな飲み口や、上品な甘みに関係しているといわれている。

蒸溜所の東エリアは豊かな穀倉地帯のため、このエリアで収穫される大麦が使用されている。もともとこのロージアン地方はスコットランドの農業革新の中心地だった。なだらかな丘陵地帯に農地が広がるこの地域は、大麦の栽培には、これ以上ないほどうってつけの土地だった。

グレンキンチーという蒸溜所名が最初に使われたのは、1837年のこと。ロージアンの農家であったジョンとジョージのレイト兄弟が、ミルトン蒸溜所として創業をはじめたのが1825年。あくまで農家の副業だったようだ。

その後、1837年に正式ライセンスを収得し、グレンキンチー蒸溜所として創業した。ところが、財政難によって、1853年に蒸溜所を地元の農家に売ってしまう。そしてウイスキーづくりをやめて、敷地内で製材所や牛舎を営むようになった。

だが、1880年にスコッチウイスキーの人気が高まってくると、1881年エディンバラのビジネスマンたちの事業体が蒸溜所を買収し、ジェームズ・グレイ少佐指揮のもと、グレンキンチー・ディスティラリー・カンパニーの名のもとでスピリッツの蒸溜を再開させた。1890年には大規模な再建計画が実行され、その時にできたのが現在も残るビクトリア朝風の赤レンガの建物である。

20世紀初頭の不況を乗り越え、第二次世界大戦中も操業を続けていた数少ない蒸溜所だ。1914年、ローランドの4つの蒸溜所とともにSMD(スコティッシュ・モルト・ディスティラーズ)を創設。1925年DCL(ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド)に買収され、ギネスがからんでまたも買収され、ユナイテッド・ディスティラリーズ(UD)となるも、またまた合併など変転を経てディアジオ傘下となった。

さらにはフロアモルティングが1968年に廃止されると、その製麦設備が「モルトウイスキー製造博物館」に改修され、呼び物の一つとなった。マイケル・ジャクソンも、
「その展示品のなかには、バセット・ロウク社によってつくられた蒸溜所の75年前の精巧な模型があるが、この会社はミニチュアの蒸気機関車のほうがよく知られている」
と書いている。

この蒸留所のポットスチルは、釜の蓋のすぐ上で、首に収縮する部分のある独特のランタンヘッド型でペア各1基ずつ。が、その大きさは巨大で、初溜釜の容量は3万1000L、スコッチとしては業界最大級をほこっている。そのラインアームは急角度で下に曲げられている。コンデンサーはというと、伝統的なキャストアイアン製のワームタブにこだわっている。仕込みは、ワンパッチ麦芽9.5トンで、4万2000Lの麦汁を抽出。

9.5トンのマッシュタン、クラシックで木桶発酵のウォッシュバック、これが計6基。その時間はというと48〜72時間と、ほかの醸造所とくらべ、やや短めだが、それは仕込み水が硬水であることが影響しているらしい。ケリー社のリキッドイーストを使い、発酵後のモロミのアルコール度数は10%とやや高め。

蒸留所としては、やや小規模だが年間生産能力は約250万Lであって、9割がブレンデッド用。この蒸留所からディアジオのブレンデッド・ウイスキーであるジョニー・ウォーカーの骨格となる原酒を生み出し続けている。ほかの提供先として、蒸溜所の歴史に深く関わってきたヘイグも、そのうちの一つだ。

ローランドモルトではあるが、スぺイサイドのような、上品さを備え、花のイメージや甘い樽感を持っており、シングルモルトウイスキーとしても評価は高い。

12年; ライトボディだが、しっかりしている。フレッシュな酸味を感じさせ、フローラルな甘さも。味わいは、わずかなスパイシーさと、クリーミーさも。口当たりはスムーズ。食前酒にうってつけ。当初は10年物だったが、2007年に酒質をアップした12年物に。

10年間熟成したモルトを、アメリカンオークの樽でさらに2年間熟成させことによって、ローランドの本質的なキャラクターを守りつつ、草のような甘さや魅力の特別なキャラクターを、より豊満なスタイルを持つことになる。

ダブルマチュアード; アモンティリャード・シェリー(柔らかい酸味を持った辛口タイプ)を熟成した樽で仕上げの熟成がされている。1997年からのニューリリースで、二段階熟成の豊かなボディーとスパイシーな風味が楽しめる。

参考;「シングルモルトウイスキー大全」土屋 守(著) 小学館(刊)

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