カクテルの魅力は、こだわりにあり! (3)

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カクテルの魅力は、こだわりにあり! (3)

■ スタンダード・カクテル(3); オールド・ファンションド & ジャック・ローズ

オールド・ファッションド

“古めかしいもの”という意味のオールド・ファッションド(old fashioned)。 今日のロックグラスを指す「オールド・ファッションド・グラス」という言葉は、このカクテルがモトになった。

19世紀に誕生した古典的なウイスキー・ベースのカクテル。ケンタッキー・ダービーがおこなわれるチャーチルダウンズ競馬場の「ペンデニス・クラブ」のバーテンダーが常連客のためにつくったといわれる。しかし、「マンハッタン」をつくったことでも知られ、後に英国首相チャーチルの母となる、ジェニー・ジェローム令嬢の作という説もあって、なかなかおもしろい。

ベースに使うウイスキーはバーボン、ライなどのアメリカン・ウイスキーがもっぱらだ。しかしながら、お好みのスピリッツを使い、飲み手がマドラーでフルーツや角砂糖をつぶし、好みに合わせて味を調整しながら楽しむ、じつに遊びごころ満載な大人のカクテルである。

そのライこと、ライ麦でつくるウイスキーは、南のペンシルバニアや、メリーランドに定住したスコットランドやアイルランド系移民がライ麦を育て上げ、持ち前の蒸留技術を駆使して、ウイスキーつくりをはじめた。

しかし、独立戦争後、新政府はウイスキーに莫大な税金をかけ、財源にしようとした。1791年、暴動がおこりはしたが、鎮圧されるも、気骨ある農民たちは、アパラチア山脈をこえてケンタッキー州に逃れ、そこで収穫されるトウモロコシを原料につかって、バーボン・ウイスキーをつくった。

もともと、ライ・ウイスキーをベースだが、今日では、

バーボン・ウイスキー 45ml
アロマチック・ビターズ 2dashes
角砂糖 1個
オレンジ・スライス (ライム・スライスや、レモン・スライスを加えるレシピもある)
が、いまや一歩進んで、ベースがバーボンじゃなく、スコッチなのが今風なのだ。

オールド・ファッションド・グラスに角砂糖を入れ、アロマチック・ビターズをお好みの量で振りかけて、滲みこませる。氷を入れ、ウイスキーを注ぎ、スライス・オレンジ、マラスキーノ・チェリーを飾る。

フルーツに傷がつく程度に混ぜ、マドラーを添える。レモンやライムなど、ほかのフルーツも合わせて添える。ちなみに、当初のレシピは、バーボンにシュガー・シロップ、ソーダ、ビターズを加えただけものだった。

オールデイ・カクテルとしても、食前酒としても飲まれるカクテルである。どのフルーツをどれだけ絞るかによって、味を調整できるほか、角砂糖を使用した場合には、角砂糖の溶け具合で甘さの調節もできる。

アメリカン・ウイスキーの香ばしい香り、適度な甘さと、ほろ苦いテイスト。華やかなデコレーションがあいまって、ポピュラーなカクテルとして、人気は不動。このオールド・ファッションドは、バリエーションが多い分、レシピはこうでなければいけないというコダワリ派が多い。

■■スタンダード・カクテル(5);「オールド・ファッションド」■



ジャック・ローズ(Jack Rose)

カルヴァドス・ベースのカクテルでは、最も有名である。

「飲みたまえ、一度に体のなかから温まるよ」
と、ナチに追われる外科医シャルル・ボアイエが、失意の歌手イングリッド・バーグマンを助け、勇気づけようと、近くの酒場に入って注文したのがダブルのカルヴァドスだった。この大メロドラマ映画「凱旋門」で、いちやくカルヴァドスが知れ渡った。

シャンパーニュじゃ、この場にはふさわしくない。コニャックもまた、優美すぎる。甘酸っぱいりんごのフルーツ・ブランデー、カルヴァドスが似合うってことか。

ジャック・ローズ (Jack Rose)のエレガントさ、かつ力強い一杯は、1900~10年の間にニューヨークで生まれた。アメリカではカルヴァドスのことを、「アップル・ジャック」と呼ぶことが多く、“アップルジャックでつくったバラ(ローズ)のような色合いカクテル”というのが名前の由来。

また、ジェイコブ・ロゼンツヴァイヒの「ボールド・ジャック・ローズ」というニックネームからついたとも。リンゴの風味を持つブランデーに、ライム・ジュースを合わせ、すっきりと甘酸っぱい味わいが、楽しめるカクテル。ロックにして飲むのも、おすすめ。

アップル・ジャックとは、アメリカ産のニュージャージー産のリンゴを原料にしたアップル・ブランデー。しかしながら、あまりなじみがなく、ほとんどフランス産のアップル・ブランデーを使用している。

なかでも、最高級はフランス北西部、ノルマンディー地方産のカルヴァドス。その地域でつくられたブランデーだけに与えられる名前であり、そのほかの地方産とは、明確に区別されている。とりわけ優良な産地は、ベイ・ドージュ地区だ。穏やかな気候だが、海の影響か湿度が高く、霧のような雨が降る。

その地ノルマンディーは、「ブドウ・ライン」より北に位置するため、ブドウが育たない。シードル用のリンゴの木がおよそ900万本、800種が植えられていて、18世紀にはすでにつくられていたようだ。レシピは、こうだ。

アップル・ジャック 3/4
グレナディン・シロップ 1/4
レモン・ジュース 1/2個分 かライム・ジュース 1個分
シェークして、カクテル・グラスへそそぐ。
分量は、バーテンダーによって、異なる。鮮やかなバラ色を生み出すのはグレナデン(ざくろ)・シロップ。西洋では美の象徴とされるバラ、その色彩が溶け込んだあでやかなカクテルである。とりわけ味の深さと、色あいの美しさは、素晴らしい。

余談だが、ライムを使うカクテルは、ほかに果実系のモノを使う場合とくらべて、非常にバランスを取るのが難しい。基本的に、味と香りが強い上に、ライム自体にも当たり外れがあるからだ。

そんなこんなで、ライムの酸味が前面に出てしまうと、あまりよろしくない。理想的なのは、果実の甘味のなかに、酸味が漂うような感じがベスト。果実風味というのも、ざくろだけじゃなくて、りんごの甘味も出せれば、お見事。

■■スタンダード・カクテル(6);「ジャック・ローズ」■



★★ モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚(Le Nozze di Figaro)》K.428

モーツァルトの数あるオペラのなかでも、その天才ぶりが遺憾なく発揮された作品。といっても、モーツァルトのオペラとしてはもっとも良い仕上がりというわけではない。全体として最高の出来栄えを示すのは、「コシ・ファン・トッテ」で、「ドン・ジョバンニ」と続く。

それでも、親しみやすいメロディが全編にあふれ、幸福感に満たされる(これは、「魔笛」にもあてはまる)。かれのオペラの序曲のなかでも最も有名な序曲と、全4幕からなるオペラ・ブッファ。第1幕と第3幕は、本格的なフィナーレを持たないので、2幕形式の変形とも。

その序曲も素晴らしい。短いながらも、ソナタ形式。ざわめきのような感じの第1主題が弱音で出て、非常にわくわくとさせてくれる。フィガロがスザンナと結婚する当日の、1日の出来事を描いた作品。

音楽はよく歌い、よく弾み、フィガロの〈「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」〉や、伯爵夫人の〈「甘さと 歓びの美しい時は」〉、ケルビーノの〈「恋とはどんなものかしら」〉など、ソロ・アリアの数々。バルトロとマルチェリーナが実の親子と判明し、みんなで再会の喜びを歌うシーンでのアンサンブルなど、モーツァルトならではの新しい手法をとりいれている。

今夜はちと趣をかえて、フランスを代表するジャン=ピェール・ポネル演出のオペラを「映画化」したものを観る。不朽の名盤。
アルマーヴィーヴァ伯爵…ディースカウ(バリトン)
伯爵夫人…キリ・テ・カナワ(ソプラノ)
スザンナ…フレーニ(ソプラノ)
フィガロ…プライ(バリトン)
ほか、豪華キャスティング。ベーム/ウィーン・フィルは、ここでも優美な音を響かせている。

cocktail
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