傑作・ラガヴーリン!

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ラガヴーリン ( Lagavulin

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「歳月は情熱の炎を消し去り、ぬくもりに変える」
と、ラベルにいわく。全モルトなかの傑作ともいわれるラガヴーリン。

「アイラの巨人」とも称され、やさしさのなかに力強さを秘めた、アイラ島を代表する逸品。濃いコハク色と、スモーキーで、強烈なピート香、海草や潮の香りなどが複雑にからみあったハードタイプのモルトをづくりを続けている。

ブレンデッド・ウイスキーのホワイト・ホース(スコッチ業界最大手のディアジオplc)の原酒としても有名で、しっかりとしたテイストのなかにも、なめらかさがあると定評がある。

世界的なウィスキー評論家、故マイケル・ジャクソンは、その記念碑的著書「モルトウィスキー・コンパニオン」のなかで、
「この古典的なアイラ・モルトは、入手しやすいウィスキーのなかでもっともドライかつ、もっとも長くアタックが持続し、近年になってからは、かつての無名時代を抜け出て国際的なスターダムにのしあがった」
と、賛辞を送っている。その証拠に、クラシックモルト・シリーズのひとつである「16年」、および「1879 Double Matured、Distillers Edition」に、95点と高評価をあたえている。

蒸溜所は、ヘブリディーズ諸島の女王と知られる聖地・アイラ島の玄関口、ポート・エレン港から東へ4キロほど行った先の、海岸沿いに位置する。

ラガヴーリンとはゲール語で、「水車小屋のある窪地」のイミであって、「小さな谷間の水車小屋をかこむ村落」に由来しているという。その名前の由来となった2つの水車小屋の碾き臼の石は、現在も村に残されている。

ここアイラ島は、何世紀も前にスコットランド西岸沿いの海を支配し、ザ・ロード・オブ・ジ・アイルズ(島々の王)の拠点でもあった。バイキングと戦うために船出した砦が、石造りの枠組みだけだが残っている。

12世紀中頃、アイラ島をはじめとするスコットランド西側・ヘブリディーズ諸島から、ヴァイキングを撤退させたケルト系の血をひく英雄、サマーレッドに与えられた名誉ある称号である(※ アードペッグに同名の一品がある。それは、これっ! 詳しくは、そのときまで…)。

ラガヴーリンは1816年、密造で有名なジョンストン家がアイラ島で密造ウイスキーをつくり、スコットランド本土で販売したのが始まり。それは1742年までさかのぼることができるという。

比較的季候が温暖であり、大麦の栽培に適していた。それに、人が近づきがたいじくじくした湿地帯ではあり、その地表の1/4がピートにおおわれ、その良質のピートと豊富な湧き水に恵まれていた。1700年代中頃には、密造所が10軒も存在していたと伝えられている。

当時は、ジョンストンと、その家族が所有する「モルトミル」、「ラガヴーリン」の2軒の蒸溜所が隣り合って稼動していた。1960年に「モルトミル蒸溜所」は停止され、その跡地は現在、ビジター・センターとして利用されている。

ラガヴーリンのモルトは、ポート・エレン製麦所にモルティングを依頼。マザー・ウォーターは、蒸留所ウラの丘の上にある、ソラン湖の湧き水を利用している。湧き水自体が濃いピート色をしているため、ラガヴーリンの強烈な個性のもととなっているようだ。

蒸溜器はたまねぎ型のストレートヘッドで、2基のウォッシュ・スチル(初溜釜)と、2基のスピリット・スチル(再溜釜)の、計4基で5時間ほどかけてじっくり蒸溜をおこなわれる。

蒸溜されたニュー・ポットは、オーク材の樽で熟成。そして、その伝統的な土床の熟成庫は高波に洗われ、いまも、名残の専用の桟橋をもっている。

ピート、海草、ウッド、そしてフルーツ香ぶくみの複雑な香味で、アイラ島の名を世界中に知らしめた。あらためて言うまでもないことだが、スコットランドが生み出した最高のシングルモルト・ウイスキーのひとつであることに間違いはない。

参考図書;「スコッチウィスキー紀行」土屋 守著、東京書籍刊。



♪ エルガー交響曲第1番変イ長調 プレヴィン/ロイヤル・フィルを聴く。 ♪

エルガーの第1番は、英国人が大いに胸を張って誇れる最高の交響曲。荘重さと穏やかさ大らかさ、さらには一種の翳りすらある。50歳を迎えた1907年に創作に着手し、翌08年に完成させる。

冒頭のゆったりとした気品のある主題が何度も繰り返されながら次第に気分が高揚していく第1楽章はなかなかに感動的。そして、その主題がフィナーレで、もう一度回帰して、高らかに奏されるのを聴くと、まるでブラームスを聴くときのような興奮,高揚感をおぼえる。

それに、静かで美しい叙情性に満ちた第3楽章のアダージョ、ここにエルガーの魅力がある。 大好きなプレヴィンの演奏を愛用のiPodで聴く。