グレンドロナック

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樽熟成のエキスパート、グレンドロナック

Glendronach

東ハイランド地方の丘陵地の奥深くにあるフォーグの谷、麦畑にかこまれたスコットランド最古の蒸留所のひとつであるグレンドロナック。シェリー樽での長期熟成、重厚で芳醇なスピリッツで知られている。敷地内を流れるドノナック川に由来。ゲール語で、「ブラックベリィの谷」という意味がある。

原料の大麦は、地元産。バルヌーン・スプリングから水を汲み上げ、みずから製麦。仕込み水も、むろん同じ湧き水を使用。その湧き水をたっぷりと吸わせた麦を床に広げ、シャペルでひっくり返し、ほどよく発芽させる。昔ながらの、フロア・モルティングと呼ばれる伝統的な製法から、ウイスキーづくりがはじまる。以前は、大部分を「ティーチャーズ」や、「バランタイン」などのブレンドに供給していた。

しかし、残念なことに、1996年まではフロアモルティング、そして石炭の直火焚きを最後までおこなっていたが、フロアモルティングは、90年代後半に一時停止された期間にのみ閉鎖。 また、スチルを加熱するために石炭火を使い続けた最後の蒸留所だったが、2005年に蒸気加熱コイルに切り替えた。熟練した窯焚き職人がいないのだという。

それでも、3.7トンの伝統的なレーキとプラウのマッシュタン、9つのカラマツのウォッシュバック、4つのスチルが装備されている。これにより、年間最大140万リットルのスピリッツを生産できるようになった。

1826年、若き農場主であったジェームズ・アラディースが自身の館の隣に蒸溜所を建てた。彼のつくったウイスキーは評判が良く、地元貴族のおめがねにかない、またたくまに名声をはくした。が、好事魔多しというか、その名声に溺れ、あげくは自身の不始末により蒸留所の大部分は全焼、そして、すべてを失ってしまう。

1837年に、再建された。ティーニニックのウォルター・スコットが1852年に引き継ぎ、35年間運営した。当初、そこで働く多くの人々の生活は蒸留所を中心とし、1860年代までに50人以上もの人たちが蒸留所の周りに住んでいた。

1920年には、グレンフィディックの創設者の息子であるチャールズ・グラント大尉に買収された。その後20世紀の終わりごろにかけて、企業の買収や合併でオーナーが次々と変わった。アライド社は、1976年にウィリアム・ティーチャー&サンズから引き継ぎ、1996年に廃止されるまで蒸留所を運営していた。2002年にアライド社の元で操業が開始されたが、その崩壊後、親会社のペルノ・リカールに所有権が移ったのが、2005年。

マイケル・ジャクソン(著名なウィスキー評論家)によると、
「同社のポートフォリオに、この蒸溜所が入る余地があるように見えなかった。新しい所有者はベンリアックの隆盛と、ウイスキー製品を非常に見事に復活させたその一団である」

2008年には、ベンリアック・ディスティラリー社に売却。果たして、ウェアハウスに残っていた9000樽もの熟成途中にあった資産を大いに活用。翌年、「12年」、「15年」、「18年」のシングルモルト全シリーズをリニューアルした。

今日、コアの範囲は広大で、8年の「ヒエラン」、12年、15年の「リバイバル」、18年の「アラディス」、「21年」で構成されている。 が、人気の高かった「リバイバル」は、在庫がなくなったため、2018年後半に終了。ペドロ・ヒメネスとオロロソ・シェリーの樽で熟成されたこのシングルモルトは、ノーズと味わいに強いチェリーの香りがある。フィニッシュは、ハーブのビターズとダークチョコレートで比較的苦いとされている。

さて、そのシェリー樽だが、その使い方がほかとはちょいと違う。2種類を用意するのだ。ひとつはほかの蒸溜所が多くおこなっている方法だ。スペインで樽をつくり、3年間オロロソを寝かし、回収する方法だ。もうひとつが変わっている。



アメリカン・オークの新樽に、「ティーチャーズ」用の原酒を6年間ほど入れ、その空き樽をスペインに運び、3年間オロロソを寝かすというものだ。アメリカン・オークの甘いニュアンスは、「ティーチャーズ」にとっては必要な香りなのだ。そこであらためてシェリー樽で寝かすことで、バランスのとれたアメリカン・オーク製のシェリー樽をつくりだしているのだ。

こうして調達した2種類のシェリー樽を、3回ずつ使うという。樽の香りは、1回ごとライトになっていくので、6種類のシェリー樽があるといっていい。それらを、ヴァッティングすることによって、シェリー樽特有の香りとあいまって、アメリカン・オークのナッツの甘い香りと、ハーブの香りが醸し出してくる。

また、上記のメインレンジに加えて、「PeatedPortwood」や24年と27年の「Grandeur」などの限定リリースも多数ある。それらは、11年から28年までの複数のバッチ16樽瓶詰めによって結合されている。

※ 参考;「シングルモルトスコッチ大全」土屋 守(著) 小学館(刊)
「シングルモルト 蒸溜所紀行」山田 健(著) たる出版(刊)

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