ロングモーンに、外れなし!

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ロングモーン(LONGMORN)

ハイランドの心臓部、エルギン(UDGの生産本部でもある)の南方、古代僧院の場所地にある。その谷間の大きな池に、白鳥が舞う。

「ロングモーンに、外れなし」
といわれる、まずは一流どころのハイランドモルトだ。長期熟成のロングモーンの場合、とりわけ、甘くて重いシェリー樽の味の強い。食後酒としては、最高のモルトウイスキーだ。

ロングモーンはスペイサイドの数ある蒸留所のなかでも、最も個性が強いシングルモルトをつくっている。軽いピート香と、バニラ香、シェリー樽で長期熟成しても、樽に負けないボディが感じられる。アイラモルトに飽きたなと思ったときには、ぜひロングモーンの長期熟成ものを試していただきたい。

スパイシーさも売り物である。でも、やはりそこだけに偏らないバランスの良さが、ロングモーンの良さとなっている。また、ここの蒸留所は、珍しくオフィシャル商品の方が、うまい確立が高いということだ。これほど造り手の愛情を感じる酒も、今時の大量生産の酒にはあまり見られないであろう。

マイケル・ジャクソンは、著書「モルトウイスキー・コンパニオン」で、
「もっとも偉大なスペイサイドモルトの1つであり、ウイスキー通には愛されるが、知名度は低い」
とのべているように、ブレンダーの評価が高い隠れた銘酒。

1893年、ウイスキー・ブームのまっただなかジョン・ダフが創業。1899年、ジェームズ・R・グラントが買収。1972年、シーグラム社の傘下へ。 ゲール語で「聖人の場所」の意味。蒸留所が建てられた場所に教会があったことから名づけられたらしい。 仕込水は、ミルビュイズの泉。

シーバス・リーガルのトップドレッシングモルトとして有名。実際に、非常に揮発性の強い、明るく華やかな花のような香りのほとんどは、ロングモーンに由来するものだということが、すぐに理解できる。現在はペルノ・リカール社所有。

マッシュタンは、ステンレス製でワンパッチは8トン。ウォッシュバックは、オレゴン松製×8基と、ステンレス製×5基の両方で、伝統と近代の両面を持っていたが、現在はすべてステンレス製にきりかえた。

ポットスチルはストレートヘッド型で、初留、再留あわせて8基。変わっているのは初留釜と再留釜でそれぞれ部屋が分かれている。1990年代半ばまで所留釜は石炭直火焚きをやっていたためである。現在はどちらもスチーム加熱でおこなっている。初留×4基 再留×4基 。

「ロングモーン・10年」、オフィシャルではなくキングスバリーのボトラーズもの。オフィシャルは間違いなく美味しいだろうが、高価で品薄。10年くらいの、まだ荒々しい奴のほうが興味深い。香りはかなり強烈なのに、アタックはさほどでもない。途中でバニラやレーズンのような風味がどっと押し寄せ、あとにスパイシーな香りが残る。バランスもよく、飲んでいて飽きない。

度数は43度、ホグスヘッドの樽に寝かされその味わいを損なわないように、無添加そしてチルフィルターなしでボトリングされている。そのため、低温下にあると内容物が結晶し濁りや曇りとなって出てくる。でも、これは原酒の旨み成分。美味しいわけだ。ほのかに赤みが差した、やや薄めの黄色。少し強めのアルコール香、柑橘系の香り、木樽などの要素がある。アルコール香は鼻腔をくすぐるようだ。時間を置くと、バーボン樽、汗などのニュアンスが加わる。

口に含むと、ドライなアルコール感、フルーツ・ミックスジュース、パチパチしたインパクトある感触、ソーテルヌのような風味、青リンゴなどが次々と現れる。余韻は長く、どこか白ワインのような印象がある。

評判の良かった「15年」が生産中止になり、代わりにおしゃれなボトルに変貌した「16年」が登場したが、ちょいと期待はずれだったようだ。

『ザ・ゴールデン・カスク』シリーズはマクダフ蒸留所のオーナーが個人的にストックしていた樽を瓶詰めしたシリーズで、無着色・無冷却濾過にて瓶詰めされている。樽の選別はラフロイグ蒸留所やスプリングバンク蒸留所のマネージャーを歴任したジョン・マクドゥーガル氏とその奥さんがおこなっているそうで、業界の第一人者が選別した樽をシングル・カスクで楽しめるのが魅力だ。そういった背景もあり、この『ザ・ゴールデン・カスク』シリーズは非常に評判が良いそうだ。

オフィシャルと同じ香りの印象で、グラスに注いだ時点で軽やかにふわっと広がる明るくて華やかな、きらびやかな香りは特徴的だ。蜜のようというほど、甘みの強くない。味は香りのイメージからも想像できるように比較的軽く、さらっと控えめな甘みがまず口の中に広がる。と、思うと一瞬で引いていき、すっと余韻も消えていく。オフィシャルより度数が強いので、華やかさと軽さが身上のこのモルトにしては少しいかつい印象を受けるが、その基本的な性質はオフィシャルの持つイメージとまったく同じだ。

最後に、あのマッサンこと「日本のウイスキーの父」、竹鶴政孝氏が修行した蒸留所のひとつでもある。

参考図書;「シングルモルトウイスキー大全」(土屋 守著 小学館刊)

■■飲酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。お酒は楽しくほどほどに。