アベラワー

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ワインの子守唄はモーツアルト、アベラワーにはバグパイプ。

アベラワー蒸留所は、峻険な頂に覆われた秀峰ベンリネス山などの雄大な山々の風景に取り囲まれている。

1826年にジェームズ・ゴードンとピーター・ウェアによって、スペイサイドのほぼ中央、そのベンリネス山を源とするラワー川沿いに建てられた。アベラワーとは、ゲール語で「せせらぐ小川の川口」を意味を持ち、蒸溜所が建てられる以前からこの地では密造酒が盛んだった。

仕込みに利用する水は、もちろんベンリネス山に降る豊かな雨と雪が地下の花崗岩とピートで濾過されたとても清らかな軟水である。アベラワーの滑らかな舌触りは、水の清らかさから生まれている。

じつのところ、密造者たちは、当初聖ダンスタン(スコットランドでは聖ドロスタン)の井戸水を利用していた。この井戸は、後にカンタベリー大主教となる聖ダンスタンがハイランドの氏族であるピクト族を洗礼する際に使用した歴史的なものなのだ。そのままアベラワー蒸溜所でもこの水を使っていたが、井戸が涸れてしまった現在はベンリネス山の中腹にある泉のから水を引き利用している。

現蒸溜所の建物は、1879年の火災後に再建され、名人チャールズ・ドイグが設計したヴィクトリア朝の美しい建物であった。この再建に大いに貢献した男がいる。

地元出身の銀行家であり、慈善家でもあったジェームズ・フレミングだ。かれは蒸留所だけでなく街灯や橋など、町の発展にも貢献した。このことから、創業年を1826年ではなく1879年としているくらいだ。1898年火事のためまたも再建、1973年には4つ蒸留器を拡張した。1974年にはキャンベルディステラーによって買収され、近隣の村の名前を蒸留所名とした。その後、1974年にフランスのペルノ・リカール社に買収され、その際に近代的な設備も加えられた。

ウォッシュバックは1基7万ℓのものが、ステンレス製で6基。ポットスチルはストレートヘッド型で、初溜釜2基、再溜釜2基の合わせて4基など、近代的設備がつけ加えられた。マッシュタンも、ステンレス製でワンバッチ13トンと巨大。蒸溜時間や温度などは、すべてコンピューターにて調整されている。

ストレートヘッド型のスチルは玉ねぎ型とも呼ばれており、独特の還流を引き起こしミディアムボディでフルーティーな特徴の原酒が仕上がるといわれている。「モルトウィスキー・コンパニオン」によると、こうだ。
「ボディは最低でもスーパー・ミドル級に位置する。近年、多くのメダルを受賞し、ライトヘビー級として、ボクサーのカーペンティアが成し遂げたように大物のモルトと十分に闘っている」

また、アベラワーは熟成の技術に長けた蒸溜所でもある。特に厳選したシェリー樽とバーボン樽の2種類の樽を使って熟成する“ダブルカスクマチュレーション”が特徴的で、これによりブランデーのような濃厚で強い甘みや、リンゴやベリーなどのフルーティな風味を引き出すことができる。シェリー・バーボンのほかにも様々な樽を所有しており、それぞれで熟成のピークの見極めヴァッティングすることで、アベラワーの見事な風味を生み出している。

また、アベラワーでは熟成樽の栓にコルクを使用している。通常樽栓には木製の栓が使われるのだが、コルクの方が不純物が早く気化する、という考えでコルクが使用されている。また、シンプルでトラディショナルなボトルデザインは、創業当時アベラワー村の人々が蒸溜所に薬瓶を持参しウイスキーを樽から直接入れていた、という逸話を元に「薬瓶」をイメージしてデザインされたそうだ。

それとともに、ちょいといい話だが、かつての倉庫主任だったフレーイザー氏が熟成庫に眠るウイスキーたちに子守唄がわりに、バグパイプを演奏していたのだそうだ。

華やかな香りと、フルーティーさ。口当たりがよく飲みやすいのが特徴。以前から、フランスでは人気があったが、近年世界的にも売上好調。アベラワーは、2種類の熟成樽で寝かせた原酒をバランスよく合わせたスコッチ。リッチなテイストなので、食後酒としてもおすすめ。熟成期間によって香りや味わいが異なるアベラワーを、飲み比べてみてはどうだろう。
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アベラワー ダブル・カスク マチュアード
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「アベラワー アブーナ」;a’bunadh、ゲール語で「起源」を意味する「アブーナ」。創業当時の製法でつくられているナチュラルスタイル。10年以下から15年以上熟成のアベラワーをヴァッティングしたシングルモルト。熟成にはスパニッシュオークのオロロソ・シェリー樽を使用。濃いオレンジ色。香りはシェリー、ミント、プラリーネ(木の実入りキャンディ)。ボディは、フル。味わいは、リッチ。冷却ろ過をしないノンチルフィルタードで、加水をせず樽出しそのままの原酒をボトリングしている。食後酒向き。

「アベラワー ダブル・カスク マチュアード」;熟成期間によって香りや味、余韻が異なる。
12年は、円みのある香りやフルーティーなアロマ、甘くて微かにスパイシーな余韻などが特徴。16年は、リッチでフローラルな香り、フルボディの濃厚な味わい、フルーティーでスパイシーな余韻。18年はリッチさが増して、バタースコッチのような香り、蜂蜜のような味わいやクリーミーさ、バランスのとれた長く続く余韻。

■■飲酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。お酒は楽しくほどほどに。