エドラダワー、スコットランド最小の蒸留所!

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ああウイスキー! 遊びと悪戯の命!
詩人の心からの感謝を受けてくれ!  (中村為治訳 「R・バーンズ詩集」岩波文庫)

スコットランド最小の蒸留所

☆ Today’s Special ☆

■ モルトウィスキー;エドラダワー(EDRADOUR)/南ハイランド
■ Classical; モーツァルト、「フルートとハープのための協奏曲ハ長調」 K.299(297C)

シングルモルトの銘酒。スコットランドの蒸留所のなかで、最も小さな蒸留所として有名である。マイケル・ジャクソンは、その著書「モルトウイスキー・コンパニオン」のなかで、
「その起源が農場であったことを、建物は物語っている」
と書き、
「このクラシックで可愛らしい蒸溜所は、谷の中に隠れている。訪れる人が丘の頂上に近づくと突然、眼下のクボミに蒸溜所が見える」
と記している。好き嫌いの分かれるところだが、パワフルで甘いシェリー香に混じり、アイラのボウモアのように、石鹸や化粧品のような香りのするフシギなウイスキー。創業時から製法は、まったく変わっていない。ゲール語で「エドレッドの小川」という意味。実際に、その小川は蒸留所の敷地内を流れ、その小さいながらも洗練された蒸留所には、多くの観光客が訪れているそうだ。

創業は、1837年と考えられている。蒸留所の人々は、1825年までさかのぼれるというのが、ご自慢。地元の農夫が共同で、アソール公の領地を借り受け、蒸溜所をつくった。バルノールドの麓、パース州の保養地として名高いピトロッホリーの町から東へ3キロ、丘によって隠された場所にある。禁酒法時代のアメリカで好まれ、マフィアに所有されていたこともあったそうな。

フロアモルティング(麦芽精製)はおこわれていないものの、設備などもふくめむかしのまま。それが、
「古き良き時代を思わせるたたずまいを持った蒸留所」
などと、しばしば評される理由であろう。仕込み水は、花崗岩とピートを通過して湧き上がる。

スチルも、もちろん最小サイズである。これが、このウイスキーの芳醇さに一役買っているのは明らか。スコットランドの関税当局は、エドラダワーのスチルを下まわるサイズのスチル使用を法律で禁止している。これより小さいと、密造が容易だからだ。

そのポットスチルも、百年以上もむかしから使い続けている2基しかなく、ほかの蒸留所のと比べて、サイズがおどろくほど小さい。とりわけ、初留釜(ウォッシュ・スチル)といわれる1回目の蒸留に使われるのよりも、再留釜(スピリット・スチル)といわれる2回目に蒸留するのに使われる釜が、人間の背丈ほどしかない。

マッシュタンは鋳鉄製で、1900年に製造されたもの。その上、スコットランド唯一ともいえる、麦汁を冷却するモートンタイプのオープン・ワーツクーラーが、1930年代のものであって、今でも稼働している。



小さい蒸留所なので、当然、生産量も限られており、生産部門の従業員はたった3人で、1週間の生産量はわずか12樽。それは、年間の生産量も瓶にして僅か24000本ほどでしかない。これは、スペイサイドの蒸留所の平均値にして40分の1。1980年代後半になってはじめて、エドラダワー10年物が、シングルモルトとして出荷された。現在、この蒸留所の所有者は、インディペンデント・ボトラーの、シグナトリーが所有。

1920年代から、60年代にかけてウイリアム・ホワイトリーが所有し、キングス・ランサムの原酒として有名だった。そのころの話として、チャーチル英元首相が、ポツダム会議の席上に持参したともいう。

前オーナーは、フランスのペルノ・リカール社の子会社キャンベル・ディスティラリーズ社だった。2002年7月、同社長アンドリュー・サイミントン氏の数年来の夢がかない、ペルノー・リカール社からエドラダワー蒸溜所を買収することに成功した。

瓶詰業者として長く営業してきたシグナトリーは、エジンバラに本拠を構える。1980年代後半から発足した新しい会社だが、非常に希少価値の高いボトルをいくつも出しており、ボトラーのリーダー的存在となっている。いろいろな樽を仕上げ熟成に使って、さまざまなフィニッシュものを出している。カスク・ストレングス、アンチルフィルター、閉鎖蒸留所シリーズなど、ラインアップも多岐に渡っている。

エドラダワー・ガーヤ・バローロ・フィニッシュ・ストレート・フロム・ザ・カスク 11年;
エドラダワーの人気シリーズ、「ストレート・フロム・ザ・カスク」シリーズのひとつ。バローロ・ファンも大注目。しかも、ピエモンテのカリスマ的生産者であるGAJA(アンジェロ・ガーヤ)のオーク樽で仕込まれたカスク・ストレングス。バランスがよく、甘口で、なめらかでフルーティー。しかも、カスク・ストレングスなので、バローロ樽からの味わいをストレートに感じることができる。

バレッヒェン・バーガンディ・マチュアードは、エドラダワー蒸留所がフェノール値50ppmというヘビー・ピート麦芽で仕込んだ新商品。2003年に、蒸留されたもの。まだ若いが、強烈なピート香がある。バレッヒェンとは、1972年に閉鎖された実在の蒸留所の名前。

2002年に、この蒸留所に就任した元ラフロイグの蒸留所長、イアン・ヘンダーソンによる偉大な試みによるものだ。PitlochryにあったBallechin蒸留所の名前を、エドラダワーが取得し、復活。熟成には、9つの高品質な樽を使い、46%に調整。毎回6,000本のリリース予定。

バーボン、バーガンディー/赤、バーガンディー/白、オロロソシェリー、ポート、赤ワイン、ソーテルヌ、マデイラ、マンサニリャなどが、 このプロジェクトで使用された。これ以後、5~9年の間に、それぞれの熟成を見ながらボトリング。

10年; ハチミツのように甘い香り、クリーミーでとろけるような舌触り。淡い琥珀色。味わいは、クリーミー、ハニー、柔らかく甘い口当たり。フィニッシュはというと、長くとろけるようであって、バターのように濃厚である。

参考;「スコッチウィスキー紀行」(土屋守著 東京書籍刊)



♪ 「フルートとハープのための協奏曲ハ長調」 K.299(297C)♪

ウィーン派のミュンヒンガー盤(トリップ/イェリネク/ミュンヒンガー/VPO)で聴く。フルートとハーブの可憐で繊細な音色が、かすか溶け込んでいる見事さ。第1楽章から第3楽章まで、優美で美しいメロディーが流れていく。宮廷のためのクラシックから、室内で楽しめるように配慮された名曲。すがすがしい印象で軽やかな演奏だ。

もともとモーツァルト自身は、フルートやハーブについてさほど興味をもっていなかったといわれている。とりわけ、当時のフルートは、ピッチがまちまちだった。就職活動のため、母親とともにパリにやってきたモーツァルトだが、ド・ギーヌ公爵に頼まれて、この曲を仕方なく作曲したとか。パリでは、ロココ調様式がはやっていたが、その雰囲気をこの曲に反映させたといわれている。

第2楽章は、まさしく「天上の音楽」。弦の伴奏に乗って、2つの楽器がしっとりとした美しい調を奏でていく。これほどに美しく心を打つ。ロンド形式のフィナーレは、躍動感あふれるソロと、オケのつくり出す世界は、とりわけ魅力的である。

■■飲酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。お酒は楽しくほどほどに。