アイリッシュ・コーヒー

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アイリッシュ・コーヒー

アイリッシュ・コーヒー」は、アイリッシュ・ウイスキーをベースに、コーヒー、砂糖、ホイップしたクリームを加えてつくられるカクテルだ。ウイスキー愛好家から推奨されるのは、定番・「ジェムソン」だ。

ホットコーヒーの苦味や酸味、コクといった複雑な味わいに、同じように深い味わいのアイリッシュ・ウイスキーが合わさることで、体の芯から温めてくれる寒い日にはぴったり。その名のとおり、アイルランド発祥のメジャーなホットカクテルである。誕生したのは、今から半世紀以上もの昔、1940年代のことといわわれている。

◆レシピはといえば、じつにシンプル。だが、くふうのしがいがある。

1.本場アイリッシュ・コーヒーは、小ぶりのガラス製のカップで供される。耐熱ガラス製のカップ(またはコーヒーカップ)をあらかじめお湯を入れ、温めておく。

2.そのお湯を捨て、温かいコーヒーを7分目ほど注いで、適量の砂糖(ざらめ、またはコーヒー・シュガー)を加え、よくかき混ぜ、しっかり溶かす。「ジェムソンのレシピ」では、デメララシュガー(ブラウンシュガーの一種)とマスコバドシュガー(黒砂糖に近い未精製の砂糖)を、2対1の割合で加えるように勧められている。

3.砂糖がすっかり溶けたところで、「ジェムソン」を30ミリリットルほど注いで、軽く混ぜる。

4.ここでもう一度コーヒーを注ぎ、軽く混ぜたら、次は生クリームをそっと浮かせて、できあがりだ。冷やしたダブルクリーム(脂肪分48%前後の濃い生クリーム)を乗せるのが、一般的なつくり方。

これが、難しい。きれいにクリームを乗せるには、グラスの上にスプーンをかざすのがコツ。この時、スプーンの裏面をコーヒーの表面に当てつつも、スプーンのくぼみ部分にコーヒーが入らないくらいの、絶妙な距離感を保つこと。位置取りが決まったら、スプーンめがけて、ゆっくりとクリームを注いでいく。これで、コーヒーの上にクリームが広がっていくはずだ。

アイルランド南西部・シャノン川河口の漁村・フォインズにあった水上飛行場で、旅客機の乗客のために1942年に創案された。考案者は、フォインズ飛行場のパブのシェフ、ジョー・シェリダン。

当時、フォインズは1935年から飛行艇の発着する水上飛行場となっていたが、第二次世界大戦前の1937年からパン・アメリカン航空によって、飛行艇を使ったアメリカ・イギリス間の大西洋横断航空路が運行開始されると、その寄港地になった。飛行艇は航続距離が短く、途中で給油する必要があって、アイルランドはその格好の補給地だった。

しかしながら、当時の飛行艇は気密性が悪いうえに、暖房も十分ではなかったため、乗客の寒さは相当なもの。しかも、飛行艇が給油する間は、安全のため飛行艇を降ろされ、さらには極寒のなかを待合室まで移動する必要があったということだから、寒さに震える人々の姿が目に浮かびそうだ。

そんな人々を、少しでも温めてあげたいと考えたのが、アイリッシュ・コーヒーの生みの親とされるシェリダンだった。待合室のラウンジでチーフ・バーテンダーをつとめていたかれは、寒さに震えながらラウンジへと入ってくる人々のために、アイルランド産のウイスキーを使ったホットカクテルを考案した。この温かなカクテルが、アメリカ、イギリスをはじめ、給油地に立ち寄るさまざまな国の乗客を通じて各国に伝わり、いつしか世界で飲まれる人気カクテルとなっていった。

現在、シャノン空港にはカクテル考案者のシェリダンを記念して「ジョー・シェリダン・カフェ」が設けられており、記念プレートも設置されている。ここでは、むろんアイリッシュ・コーヒーを注文することができる。

さて、そんなアイリッシュ・コーヒーだが、ウイスキー愛好家から推奨されるのは、アイリッシュ・ウイスキーの定番「ジェムソン」。コーヒーには、苦味が強すぎないやさしい風味のコーヒー豆を、深煎りで。アイリッシュ・ウイスキーらしく芳醇な香りを存分にたのしめるのが、この組み合わせだといわれている。

また、アイリッシュ・コーヒーを飲む際には、浮かべた生クリームを混ぜずに飲むのがポイント。コーヒーの黒とクリームの白というコントラストをたのしむのはもちろんだが、まずは、まろやかなクリームに口をつけ、コーヒーの苦さとウイスキーの香りを味わう。これが、アイリッシュコーヒーの正しい作法だといわれてはいる。とはいえ、混ぜ合わせた場合には、クリーミーな口触りがまるでデザートのように感じられるはずだ。

あと、アイリッシュ・コーヒーは、アイスでもたのしむことができる。レシピはホットと同様で、アイスコーヒーにアイリッシュ・ウイスキーを注いで、クリームを浮かべればできあがり。

お好みだが、クリームの上にシナモンやナツメグなどの香辛料をトッピングしたり、シトラスで香りづけしたりすれば、アイリッシュ・ウイスキーの豊かな香りをさらに引き立ててくれる。また、キャラメルシロップやチョコレート、アイスクリームなどをプラスすると、よりデザート感が増して、女性たちにもよろこんでもらえるはず。

ところで、アイリッシュ・コーヒーには、アイリッシュ・ウイスキーを使うのがお約束だが、ベースとなるお酒が変わると名称が変わる。たとえば、スコッチウイスキーを使ったら、「ゲーリック・コーヒー」。コニャックを使ったら、「カフェロワイヤル」。カルヴァドスを使ったら、「ノルマンディ・コーヒー」など。

★ちょっと一言;「ジェムソン」、“NO.1アイリッシュ・ウイスキー”。1780年、ダブリンにて、スコットランド人のジョン・スタインにより創設。1805年、初代ジョン・ジェムソンが実権を掌握。その一族が、当時世界最大の蒸溜所のひとつにつくりあげた。しかし、アイルランド独立戦争と禁酒法などにより衰退、1970年代に閉鎖。1975年、生産拠点を南部のミドルトンに移す。

ピートを使わず、大麦、モルト、グレーンの3つを原料とし、昔ながらの単式蒸留方式で、3回蒸留によってつくられる。スコッチよりも軽く、スッキリしたものになる。芳香と、なめらかな味わいが身上。

■■飲酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。お酒は楽しくほどほどに。

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