女王の愛したロッホナガー!

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ヴィクトリア女王の愛したロッホナガー

ロイヤル・ロッホナガー Lochnagar(東ハイランド)NWH

ロッホナガー山麓の古い蒸溜所。「ロイヤル(王室御用達)」の名を冠した蒸留所でもある。そのためか、時折たんに『ロッホナガー』と呼ばれることもある。1880年代は、「VAT69」や、「ジョン・ベグ・ブルーキャップ」などの原酒として使われていたが、近年はウインザーというブレンデッド・ウイスキーのシグネチャー・モルトと、ごく少量のオフィシャル・シングルモルトに配分されている。

ロイヤル・ロッホナガーのロッホナガーとは、ゲール語で 「岩の露出した湖」のこと。蒸留所を建てたディー川沿いで一番高い山(標高1156m)の名前で、その山頂近くにある湖の名前が、山名に変化したからだそうだ。
「水はロッホナガー山の小さな頂からピートとヘザーのうえを通って流れてくる。12年ものは、セカンド・フィルのカスクで熟成され,一方セレクテッド・リザーブは50%がシェリー樽である」
と、マイケル・ジャクソンは、その著書「モルトウイスキー・コンパニオン」のなかで記している。

じつのところ、蒸溜所の誕生は1845年とされていが、前身となる蒸溜所が存在していた。ディー川周辺は、18世紀の終わり頃からウイスキーの密造が盛んで、多くの密造業者が活動していた。ジェームス・ロバートソンによって、ここディー川の北岸に建てられ、初めてできた合法の蒸溜所だった。「グレン・フィアダン(Glen Feardan)」、これがロイヤル・ロッホナガーの前身となる蒸溜所の名だった。

しかし、そのわずか3年後(1826年)、反感をかった周辺の密造酒業者による焼き討ちにあって、蒸溜所は焼失。それでもロバートソンはめげることなく、ロッホナガー山の近くへ場所を移し、あらたに「ロッホナガー蒸溜所」を設立するも、またもや1841年に火をつけられ、ついに廃業に追い込まれてしまう。

その後、ジェームスの意思を継いだのが、現在のロイヤル・ロッホナガー蒸溜所の創始者、ジョン・ベッグだった。ジョンは1845年、新「ロッホナガー蒸溜所」を設立。幸いなことに、もう焼き討ちにあうことはなかった。ちなみに設立当時、蒸溜所名には「ロイヤル」の文字はついておらず、「ロッホナガー蒸溜所」として稼働をはじめた。

その3年後の1848年に偶然、蒸留所隣のバルモラル城をヴィクトリア女王が買い、夏の離宮としたことがきっかけで、商売気があったかれは、王室にウイスキーを献上することとなったといわれている。それは、お隣さんのよしみで、王室秘書に手紙を書き、蒸溜所が稼働したことを告知したものだった。すると、おどろいたことにヴィクトリア女王と夫のアルバート公が連れ立って訪れたという。

そんないきさつから、『ロイヤル』の称号を手に入れたわけ。蒸留所のあたりは英王室の夏の離宮バルモラル城があることから別名ロイヤル ・ディーサイドと呼ばれている。ヴィクトリア女王は愛飲の極上ボルドーワインに、ロッホナガーを数滴落としてよく飲まれたというほど、ロッホナガーのモルトが大のお気に入りだったらしい。まあ、邪道だが女王らしい飲み方だ。

このモルト、香りはとっても広がりがあって、ほんのりとスモーキーさが感じられ、麦芽風味の甘さとフルーティーさ、ライトなスモーキーさの味わいが楽しめる逸品。フィニッシュはドライに感じられるが、飲むほどに甘さを伴ってきて、ちょっとやみつきになってしまいそうなほどだ。とってもまろやかで優しい雰囲気も持っている。

ポットスチルは、初留、再留ともに各1基。そんな名声と知名度にくらべて、実際は小さな蒸留所である。しかし今でも伝統的なオープンスタイルのマッシュタン、たった2基の小さな蒸気加熱のスチル、ワームタブを使用し、そのモルトウイスキーにハイランドモルトの際立った特長を与えている。

仕込みはワンパッチ麦芽5.4トン。1週間に生産できる量はわずか35樽、蒸溜所にはそのうちの1000樽をおいて、のこりはすべてグレンロッシーへ持っていくという。9割以上は、ブレンデッド用。それも韓国の市場でNo.1のブレンデッドスコッチ、ウインザーのキーモルトだという。

かつてはジョニー・ウォーカーのブレンド用を含め、年間50万リットルにも満たないことは今でも同じとはいえ、年数もヴィンテージも表示されていなかったけれど、やたら高価なロイヤル・ロッホナガーの「セレクテット・リザーブ」は、ファン垂涎のモルトだった。ボトラーズからリリースされることは稀だが、その際には“ロッホナガー”とだけ表記されることもある。

ロイヤルの名前を冠したウィスキーは3つあって、「ロイヤル・ブラックラ」、「グレンユーリー・ロイヤル」、そしてこの「ロイヤル・ロッホナガー」。オフィシャル製品としては。この12年熟成のものと、年数表示のないスペシャル・リザーブの2種がある。スペシャル・リザーブは、1本5万円もするロイヤルの名に恥じない高級品である。 色は琥珀色。香りはすっきり爽快でストレートな香り。味わいは、豊かなこくを備えた麦芽風味。フィニッシュは穏やかだが、なかなかに華やかである。

そのロイヤル・ロッホナガー「12年」。ヴィクトリア女王の夫のアルバート公が愛飲していたとのこと。ちょっと木の香りが最初強いが、その後、軽い煙の香り、そして徐々にカラメルのような甘い香りが後から増してくる。後味はちょっとドライ、ほのかな甘みも。お薦めの飲み方はストレートはもちろん、ソーダ割りにしても違った趣きで楽しめる。

■■飲酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。お酒は楽しくほどほどに。