洗練されたアイラモルト、ブルイックラディ

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洗練されたアイラモルト、ブルイックラディ

「X4アイラスピリット」というウイスキーがある。これはアルコール度数92%という、とんでもないウイスキーなのだ。このなみはずれた度数を造るには、蒸留を4回おこなわなければならない。これを、X4と名付けた。厳密にいうと、3年熟成を果たしていないので、ウイスキーとは呼べない。

それというのも、300年以上も前、ある旅行記に4回蒸留したウイスキーに出くわした男のことが記載されている。こんな具合だ。
「最初のひと口で、体中に衝撃がはしった。スプーン2杯も飲めば十分だ。この量を超えれば、やがて息が止まり、命の危険にさらされるであろう」
と、興奮ぶりが目に見えるようだ。ブルックラディは、無謀と知りながら、それを再現した。「X4アイラスピリット」だ。3年熟成を果たしていないので、ウイスキーとは呼べない。“X4(エックスフォー)”は4回蒸留を表し、“+3(プラススリー)”は3年熟成を意味。こちらが合法的なウイスキー、”X4 +3″だ。

そんな『ブルイックラディ』は、『ゲール語』で『海辺の丘の斜面』という意味。オイルっぽさや、薬のような味を避け、複雑でしなやかなスタイルを造り上げる。そのために、使用する大麦に焚きつけるピートは微量にとどめられている。エメラルドグリーンのボトルのカラーも、特徴的だ。

ブルイックラディ蒸溜所は、1881年にスコットランドの西海岸、ヘブリディアン諸島のアイラ島の海岸沿いにハーヴェイ兄弟により設立された。建物は当時としては最先端のコンクリート造りであった。インダール湾をはさんでボウモアとちょうど対岸にある蒸溜所である。その過去を振り返るに、操業停止という厳しい時代もあった 。1994年にJBB社がインバーゴードン社から買収したが、直後に閉鎖され荒れるがままになっていた。

消滅の危機を救ったのが、以前はボウモア蒸留所で働いていたジム・マッキューワン氏と、マーレイ・マクダヴィッド社だった。生産ラインにコンピューターを使わない、フィニッシュに工夫を凝らすなど、ジム・マッキューワン氏のこだわりが随所にみられる。

すべてのウイスキーのボトリングは、マッキューワンの研き澄まれた感性によって生み出される。ジムの才能は旧来のブルイックラディの品質を決定的に変え、最優秀蒸留所および最優秀生産者に選ばれること数回という圧倒的な成功を収めた。最終サンプルを試飲し、あらためて氏のたぐいまれなる才能に驚くと同時に、先の確信を更に強めることとなった。

代々アイラ島でウイスキーの仕事に従事してきた家に生まれたマッキューワンは、地元のボウモア蒸留所でウイスキー造りのすべてを学んだ。その間、対岸にある閉鎖されたブルイックラディ蒸留所を眺めるたびに寂しさをおぼえていたかれは、2000年の夏、ついに仲間たちとともにそこを買い取って理想のウイスキー造りに立ち上がった。

現在、アイラ島で唯一の独立資本。情熱的で、能力と、経験を兼ね備なえた熱心な地元住民のチームによって経営されている。2001年8月26日の最初の蒸留がおこなわれた日は、3400人もの島民がその誇りと喜びを分かち合った。コンピューターや自動工程を一切使わず、1818年に蒸留所ができた時の設備を現在も使用。地元の湧き水を使い、蒸留から熟成、瓶詰めまで一貫してアイラ島で行うなど、あくまでも島内の生産にこだわっている。エレガントな華やかさのある洗練されたアイラモルト。

蒸留所背後の丘の上にある泉から引く仕込み水は、アイラの他の蒸留所の水に比べてピート香も少なく、46%で瓶詰。人工着色料一切無しの100%自然な色合い。人工の甘味やカラメルなどは一切使用していない。冷却ろ過を施さないことで、ウイスキーにたんぱく質やオイルを残し、より複雑な味わいや香りを保っている。

ブルイックラディはモルトづくりにおいて、徹底した伝統的なスタイルをかたくなに守っている数少ない蒸留所である。スチルハウスの木の床はもちろん、ポットスチルも操業当時からの物をそのまま使用している。釜が付いていないオープンスタイルのマッシュタンは120年前の鋳鉄製。せつびの老朽化はゆがめられないが、逆に個性と特徴になっている。

さらにポットスチルはストレートヘッド型で、首が極端に細く長いことから、アイラモルトの中では比較的軽めでドライ、クリーンなモルトに仕上がっている。口当たりは柔らかくラム・レーズンのような独特の風味があり、なおかつアイラ・モルトの特徴の潮や海藻の香りもしっかりとある。

製造のはじまりから終わりまで、職人たちによる一切の妥協を許さない手作り品質。蒸留所では、再生燃料やアイラ島のポートナヘイブンのリンペットの高台にある湖流発電から得られる電力を使用している。

アイラとしてはライトな酒質だが、最近はヘビーピートのモルトもつくっており、意欲的な製品をリリースし続けている。 麦芽のピートの度合いも、注目を浴びているのだ。ライトピート、ミディアムタイプ、そしてヘビーリーピーテッドの3つのタイプのウイスキーを仕込んでいる。さらには、3回蒸留のトレスタリグ、4回蒸留のクアドルブルなどさまざまなことにチャレンジしている。

話題の商品を次々とプロデュースしているマッキューワン氏率いる蒸留所の最新作、オクトモアはブルイックラディ蒸留所でフェノール値140ppmの麦芽を使用してつくられる世界一ピーティなシングルモルトウイスキー。

「オクトモア2.2 Orpheus」は、オクトモアのファーストヴィンテージとなる2002年と2003年のスピリッツをフレッシュバーボンの樽で熟成した後、シャトーペトリュスの樽に移し、追加の熟成をおこなった。上記のマッキュワン氏のテイスティングコメントによると、男性的で力強いピートスモークを海のキャラクターに、最も高値で取引されるといわれるペトリュスの樽による優雅なフルーティさ、スムースさと見事なマッチングを果たしています。

大麦の品種もさまざま。農家を説得して、大麦の栽培もはじめている。オプティックからオクスブリッジ、さらには古代品種のベアの栽培もおこなっており、将来的には品種名はもちろん、どこの農場で、誰が栽培したかもラベルに表記する予定だという。

1960年以前は、スコットランドのほとんどの蒸留所がそうであったように、アイラ島にあるウイスキー蒸留所も歴史的にピートをふんだんに使用してウイスキー造りを行っていたが、60年代に入るとブルイックラディはそのスタイルを変え、現在世界中で愛されているピートをほとんど焚かないブルイックラディへと生まれ変わった。

その『ブルイックラディ』は、ワインの愛好家の方に楽しめるウイスキーの一つ。いくつかの素晴らしいワインと同様に、しなやかで強すぎず、和やかでバランスがあり、複雑でありながらも、ぎこちなさがない。アイラモルトのなかで、もっとも香り豊かな食前酒。

「ブルイックラディ ロックス 」;
“ロックス”とは、蒸留所のあるアイラ島インダール湾岸の、波が打ちつけられる岩のイメージから名づけられました。ファースト・フィルのバーボン樽で熟成後、フレンチワインの空樽で熟成。様々なヴィンテージの樽を巧みに選び、造られた。リンゴ、ザクロ、ブラウンシュガー、バニラを感じさせる複雑な味わいは、非常にさわやかな酸味と甘味とのバランスに優れている。

「ブルイックラディ10年」は、シェリー樽とバーボン樽で仕上げられた。フレッシュ、躍動的いっぱいのモルト。淡い色からは想像しがたい力強い風味が素晴らしいフィニッシュを演出してくれる。

■■飲酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。お酒は楽しくほどほどに。

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